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じろきちこうし

治郎吉格子 名作短編集(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《治郎吉格子 名作短編集(一)(じろきちこうし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 178,609 字 · 362 頁

青空文庫

六

その晩、かれの母は、とうとう、明け方まで帰らなかった百のことを考えて、

(あの子が好きな女であって、こんな家を、承知で来てくれる者ならば、嫌な、飯盛女や、売女であろうと……)

と、さびしい、老いのあきらめをつけていた。

六

馬の背なかが、波のようにならんでいた。

八王子の宿はずれから、大楽寺へまで、その馬市の雑鬧と、喧騒がつづいている。あて込みのかん酒屋や、古着屋や、香具師や、あらゆる浮世のほこりが、咽せるように立っていた。

「さ、入れた、入れた、札を――」

その二日の市が終って、崩れだした夕方である。

大楽寺の境内に、なにか、真っ黒に人影が、かたまっていた。洗い髪に、うす化粧をした二十四、五の美人を、薬師堂の縁がわに立たせて、青梅の勘三と、羽村の留が、そのわきに腰をおろしていた。乾児らしいのが、二、三十名は、たしかに、その附近に立っていた。そして、三人の若い者が、入札の紙と、矢立と、札箱を持ち廻って、

「こう、入れてはねえのか。刻が、きたから、札を開けるぜ」

と、呶鳴っている。

羽村の留は、縁がわに立って、厚ぼったく取り巻いた諸国の博労や、仲買や、旅人たちを見わたして、