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じろきちこうし
治郎吉格子 名作短編集(一)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《治郎吉格子 名作短編集(一)(じろきちこうし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 178,609 字 · 362 頁
三
「それだって、誰の子かわかるものか。だんだん、賛之丞に似てくるようじゃねえか」
「寝ても、起きても、乳をのませる間も、わたしが賛之丞さんの事を、忘れないで、いるせいでしょうよ」
「いったな」
「いいましたとも」
「どれ……」
と笛ぶくろを、帯にはさんで、三五兵衛は先にあるき出した。
どうあろうと、形だけは、夫婦でありながら、敵以上に、呪いあっているこの男女が、とぼとぼと、二俣尾から青梅宿をぬけて通ったのは、あくる日だった。
宿を出て、裏街道をだらだらと下がってくると、もう、海みたいな武蔵野が、ながめられる。峠とは、陽気もまるでちがって、桃も杏花も、散っていた。道ばたに繋がれているたくさんな馬の群れが、さかんに草を食っていた。
すると、その附近の崖の蔭から、
「あ、旦那。そこへ行く旦那え」
と、誰か、ふいに声をかけた。
「え?」
と、ふり向くと、
「何か知らねえが、お腰の物が、落ちそうですぜ」
と、三五兵衛へ、注意した。
三
帯をなでまわして、
「お、笛が」
と気がついた三五兵衛は、陽なたで、笑いながらこっちを見ていた男へ、
(親切に――)と眼で、会釈を送った。(いえ――)と、向うでも。