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じろきちこうし

治郎吉格子 名作短編集(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《治郎吉格子 名作短編集(一)(じろきちこうし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 178,609 字 · 362 頁

青空文庫

九

しかし、七はまだ出て来ない。支度にしては長すぎるし、小屋の中はいやに静かだ。

九

「どうした。七!」

慎吾は、呶鳴ってみたが、返辞がないので、さては逃げたな、と土間の中へ駈けこんで見た。

と! 案外である。

相手は屋内に落着きこんでいた。慎吾はかえってギクッとしながら、覗くように様子を窺うと、彼は、さっきおろしたほおの木炭へ硫黄と青い細末をあわせて、それを乳鉢でゴリゴリ磨っていた。

慎吾は、上がり框へ片足をかけて、

「七! ひるんだな」

「ばかをいやがれ」

と、七は、磨りつぶした粉を、百匁秤にかけて眼を寄せながら、

「笑わせるな、誰がひるむ」

「出ろッ、なぜ外へ出て来ないか」

「おらあ止めだ」

「あやまったか、たわけ者め! 恐れ入ったといえ」

「ふ、ふ、冗戯をいいっこなしさ」

「うぬ、まだ広言を」

「何が広言だ、勝手な歯ぎしりを鳴らしていやがると、ここから火薬玉をたたきつけるぞ」

慎吾は思わず框の片足をひっ込めて――

「では得物を取って、尋常に戸外へ出ろ。果し合いというのは、貴様から望んだことだぞ」

「止めたっていうことよ、くどいな。おらあ、考えてみれや、煙火師だ。斬っても、斬られても、刀でやり合うなあ面白くねえ」