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じろきちこうし
治郎吉格子 名作短編集(一)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《治郎吉格子 名作短編集(一)(じろきちこうし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 178,609 字 · 362 頁
後の月
――ム、そいつに限る、いったん芸妓に出れや、あとは、本人の意志よりは、金次第、取り巻き次第というわけになりますから」
「何とかいたせ、何とか」
「抛っておいても、そうなるでしょうが、後始末のつき次第に、ひとつ、責めてを変えてみましょう」
「貴様、案外、役に立たんな」
「恐れ入りました。きょうは、御機嫌がわるいようで」
「飲もう、一つ」
また、新町へであった。自暴のやん八で、駕籠が飛ぶ。
後の月
天保山の磯茶屋から、月見舟がたくさん出る。酒をつんで、妓をのせて、川尻の澪標木のあたりまで浮かび出るのである。
十三夜の晩だった。水の上では、もう息さえ白く見えそうに薄ら寒かった。
磯茶屋を離れた二艘の月見舟がある。与力の重松左次兵衛と、自雷也床の仁吉を客に、仲居や新町の妓たちが、月釵をかがやかせて、幾人か、乗っていた。
そのうちに、諜しあわせてあった事とみえて、一艘は、ひとりの妓と、仁吉と、左次兵衛だけをのせて、末広橋から海の方へ、離れはじめた。
「あ、船頭さん、戻してください。連れの舟の方へ」
妓は、水が怖いのか、ふるえながら、遠さかる連れの舟へのび上がっていた。――この秋、紅梅から出た、淋しい新妓だった。