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じろきちこうし

治郎吉格子 名作短編集(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《治郎吉格子 名作短編集(一)(じろきちこうし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 178,609 字 · 362 頁

青空文庫

二

「もう沢山」

と、焼酎の茶椀をさしあげて、

「亭主、代りを」

しゃべっているまに、軽く五合はのんでいる。

二

近頃は、酒が、水みたいに飲めるのである。

(自暴に、身を腐らすというものは、底のねえものだ)

と、一角は、自分で自分の早い転落を、あきれた眼で、ながめられた。

千坂兵部に、

(人間も三十に近いとなれば――)

と、心機の一転を啓発されて、江戸を、立った頃は、もう底まで行ったやくざ者と、自分の堕落を嘆いたものだったが、今を省みると、それから更に、一歩も二歩も、やくざの沼に辷り込んでいる。

(己惚れではなく、人並以上の腕を持つ一角が――)

と、腐ってゆく、身の脆さを、殊に、若さを、口惜しく思わぬでもないが、どうにもならない――宿命的なものが、折角、志した米沢でも、尾いて廻った。

第一の原因は、木村丈八郎の話の不調。それから、こっちの密策が洩れたこと。お八重が、うすうす自分とお里の秘事を知ったらしいこと。清水一角ともあるものが、罪もない小娘を、過ってでも、斬った事。

一つも、いい事はない。

(千坂兵部へ、何といって、顔をあわせよう。――見込んでといわれて、米沢へ。