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じろきちこうし

治郎吉格子 名作短編集(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《治郎吉格子 名作短編集(一)(じろきちこうし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 178,609 字 · 362 頁

青空文庫

煩悩・遠三味線

師匠の応挙は、彼の親元である江戸の狩野善納という貧乏画家へ、その由を、報じたきりで、結局、厄介払いをしたように、欣んでいた。

それから、四、五年の間――その不良少年と二人の大供が、五十三次、東海道の宿々を、まるで稲を襲った害虫のように、荒し廻ったのは。

天明五人男。

彼等の望みどおり、世間から、ちょっと騒がれたが、生命は短く、やがて誰も彼も、宿場役人や、天領の十手にかかって、一人残らず、ふん縛られてしまった。

雲霧、時に、まだ二十一。

煩悩・遠三味線

「――嘘つきめ」

雲霧は、憤っていた。

牢びさしに、女の眉ほどな、月が、青い。

カチ、カチ、カチ……

遠い、火の廻りの木。

「ど奴も、此奴も、ろくでもねえ屑ばかり。何だって、俺あ、あんな狐鼠狐鼠野郎と汚え、血など嘗め合って、義兄弟になったんだろう」

と、そんな悔いさえ交じって、可惜、棒に振った生涯が、腹が立って、堪らない。――しかし自分だけは、多少はやりかけた、と慰めた。

(同じ盗ッ人でも、何か意味のある大盗になろうぜ)

と約束した間の山の会盟は、結局、自分以外は、みんな偽物だったのだ。

鼬も、暁天も、小猿も、持って生れたコソ泥根性は抜けず、打つ、買う、飲む、の貪欲にこき使われて、最後の日まで、世間泣かせの小稼ぎをやっていたというではないか。