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じろきちこうし

治郎吉格子 名作短編集(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《治郎吉格子 名作短編集(一)(じろきちこうし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 178,609 字 · 362 頁

青空文庫

十

「持参したか、どれ、見せい」

百がさしだした小柄を、じっと見て、

「よく鍛ってある」

と、角右衛門はいった。そして、額ごしにじろと、小柄と百の顔を見くらべていたが、

「いくらじゃ」

「二十金でございます」

「安いのう」

百は、どきっとした。

「山浦清麿といえば、新刀でも、近世の上手。たとえ小柄にしても安すぎる。――だが、確かか」

「え」

「いやさ、この清麿の銘は、相違ないかというのだ」

「へ、へい、間違いはございませぬ」

「変だな。出物だと申したが、地金が匂う。まだ金いろも生新しいのみか、鍛は上手だが、片切のまずさ」

百は、いよいよ、どぎまぎして、

「そ、そんなはずは」

と、吃った。

「第一!」と、角右衛門はきびしく「これをその方は、誰の手から持って参った」

「…………」

「不埒者め。これや清麿の偽物じゃ」

「どういたしまして、決して、そんな」

「おのれ、まだいうか」

いきなり、百の襟がみをつかんで、畳へひきすえると、うしろの襖へ、

「延作、延作」

と、どなった。

十

がらりっと、そこが、開いたかと思うと、はいって来た一人の男が、

「おうっ、てめえは、田無の百之介」

と、びっくりして、いった。