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じろきちこうし
治郎吉格子 名作短編集(一)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《治郎吉格子 名作短編集(一)(じろきちこうし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 178,609 字 · 362 頁
お稲と彼との仲は想像どおりなものだったが、なぜか、制しきれない嫉妬が胸に噪いでいる。また、自分の来泊を知らぬのかと思った賛之丞が、いつの筆法にもなく、腰をすえて、自分を返り討ちにしようとする手段に出て来たのも、三五兵衛には意外だったが、あの弱いのを嘆じている仇が、それくらいにまで育って来たかと思うと、ちょっと、愉快でもあった。
「で、胡麻仙、貴様はいつからそこに潜っていたのだ」
「ちょうど旦那が、炬燵の上で草双紙をひろげていた時分です」
「はてな、あの時刻に?」
「いくら耳ざとい旦那でも、気がつかないのは当り前です。外から這入って来たわけじゃなく、この戸棚の奥はこういう調子に出来ているので……こりゃあ長脇差の家にゃよくあるからくりですがね」と、仙吉が隠れ場所の種を明かした。
覗いてみると、そこは二段落しの床になっていて、中の火燈口のような狭い小襖を開けると、母屋の何処かへ抜け穴になっていた。
「寒くってしようがねえんで、ここへ、酒を持ち込んで、旦那の寝つくのを待っていた訳ですが、こう兜をぬいで、種も仕掛もぶちまけた上は、あっしは一刻もこの鮎川部屋にまごついちゃいられません。