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じろきちこうし
治郎吉格子 名作短編集(一)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《治郎吉格子 名作短編集(一)(じろきちこうし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 178,609 字 · 362 頁
八
笛ぶくろから、八寒嘯をぬいているまに、賛之丞の影は、もう、そこになかった。
八
高利貸の七兵衛が、月の末に、利子をとりに来たので、百は、ぎょっとした。――が、いいあんばいに、おしげには気づかれなかった。
のみならず、母は、百が家へ連れこんだ子もちの女を、初めは、疑惑の眼で見ていたらしいが、いつか、打解けて、
「百の嫁だったら」
などと、つぶやいた。
それに可愛いさかりの嬰児は、この寂寥な家を、急に明るくした。ほんとの孫のように、おしげは愛した。
茶うけの草餅を、仕事場のふいごの側へ運んで来た時、
「百や――」と、おしげは、そこにしゃがんで、
「お稲さんは、ご亭主があるのかえ、ないのかえ」
「ないんだとよ、おっ母。初めて山で会った時も、ちらと事情を聞いたし、ここへ来てからも、いろいろ聞いたが、なんでも元は江戸の糸問屋の娘だって」
「あの嬰児は」
「初めは、おらも、ばくち場でみた気味のわるい浪人の子かと思っていたら、甲州でちょっとべい世話になった、身分のあるお武家の落し胤だそうだ」
「道理で」
と、おしげは、百のいうことをそのまま、何もかも、善意にうけとっていた。