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じろきちこうし

治郎吉格子 名作短編集(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《治郎吉格子 名作短編集(一)(じろきちこうし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 178,609 字 · 362 頁

青空文庫

伝えられているこの郷土沿革なのである。

花火という怪美な火の魔術が、印度の仏祭から始まって、南欧に、支那に、そして鉄砲渡来と前後してわが日本へ移ってから、諸国の煙火の技術を誇りあう風がさかんになった。殊に、町人芸術の勃興した徳川期の文化文政以後からその瓦解時代にはいって刹那的享楽気分が迎えられて、よけいに著しい。

しかし、江戸では続々火災や死傷の惨害を起したりして、一時禁令になってしまったが、その反動で、煙火熱は地方的にたかくなり、国際花火の長崎を著名なものとして、九州では赤間、三河では岡崎、尾張の木賊、越後の三条、信州では戸狩――殊に戸狩花火は松代藩主の真田侯が自慢なものであった。

今でこそ長野県では二尺玉も珍しくはないが、その当時では八寸玉を限度として、それ以上大きな花火は日本の空で見られなかった。――で、その八寸玉が初めて出来た時、将軍家の船遊覧をかねて真田侯が戸狩の煙火師を連れて中洲の三又で打揚げたことがある。

それを見て、笑った大名がある。三州岡崎城の本多侯で、

「てまえの国元では、あんな花火を、草花火と申して、女子供があげております」

といった。