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じろきちこうし
治郎吉格子 名作短編集(一)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《治郎吉格子 名作短編集(一)(じろきちこうし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 178,609 字 · 362 頁
「時勢がちがってくると、大きな声ではいわれぬが、幕府でさえ、ぐらついて来ているじゃありませんか。思想、学問、工芸、なんでも古い頭脳じゃ追いつかない。七之助みたいなやつは、いくら腕がよくても、洋学が進めば、無智な土民というだけで、あんな仕事は五年も先には役に立たなくなる」
「そうでしょうか」
「そうですとも。だが、そこへ行くと、兵助殿は偉い。さすがに頑迷でない。世の中の行くところを知っている」
「いえ、あれで、そうでもないんです」
「なに、考えていますよ。その証拠には、拙者の説などもよくうけいれるし、またそなたの良人となる人物などについても……」と、彼女の横顔をわざと見つめた。
「あ……もうそこが七之助さんの家ですが」
「かまわないからおはいんなさい」
「でも」
「拙者は外に隠れていますよ。万一きゃつが返さぬの何のと苦情をいったら承知しはせん」
「そんな憂いはありませぬが、あの、ほかに少し話がありますから」
「じゃ、拙者が聞いていては、困ることと見えるな」
「追い返すわけじゃございませんけれど」
「帰ってくれというのだろう。よろしい、遠慮して、拙者は元の道へ引っ返すこととしよう。