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じろきちこうし

治郎吉格子 名作短編集(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《治郎吉格子 名作短編集(一)(じろきちこうし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 178,609 字 · 362 頁

青空文庫

「硝石をとるのよ」

「土から火薬を」

「ふしぎなことはねえや、昔やみんな、そんなものから弾薬をとって戦をやったんだ」

「でも、硝石ならば、何もそんな手数をかけないでも、売っているし、仲間の物を貰ってもいいじゃないの」

「うんにゃ」

と、七は、頑固に首を振って、

「こんどの仕事にゃ、何もかも、一切長崎仕込みのたねは使わねえつもりなんだ。意地だもの!」

「強情ッ張りだこと」

「そうよ、煙火師なんてものは、煙草の火玉でも一つ転がり方が悪ければ、骨も肉もどこへ行っちまうか分らねえ渡世だ。寝る目も寝ねえで、半年も一年も、頭を病んでこしらえた品物にしろ、どウンと一つ音がして、あっと思や、消えっちまう仕事をしているんじゃねえか。意地でもなけれや、出来るもんか!」

戸狩に生れているお芳である。その気もちはよく分っていた。

七との仲も、お互いに、ぞんざい口がふつうになるほど深かった。恋も生き方も、花火のように刹那刹那で行く男の気もちが、お芳を強くつかんで来た。尠なくもきょうまでは、この小屋の異臭や汚さが胸をむかつかせたことのないまでに――。

元から刹那主義な恋だったから、当然行き詰りが来たのかも知れない。