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じろきちこうし
治郎吉格子 名作短編集(一)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《治郎吉格子 名作短編集(一)(じろきちこうし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 178,609 字 · 362 頁
西岸の山の尾根から河原のふちへかけて、屋根へ石を載せた豆板のような家がまばらに散在して見える。
戸倉の温泉だった。やがてその辺に、チラチラと数えられるほどの燈火がつく。
「支度がよかったら、ぼつぼつ出かけようじゃないか。もう七之助のほうも、打揚場に行っている時刻だろう」
戸倉の温泉の一軒。昼間からここに屯をしていた松代藩の者があった。そのうちの四名は慎吾についている藩士だったが、あとの多くの若侍は、何かの場合の備えというつもりで、慎吾が糾合したものらしい。
「蜂屋氏、うまくやれよ」
「溜飲をさげて、後で飲むのを楽しみにしているぞ」
慎吾と、介添の四人を送り出して、彼らはその影が遠のくまで、二階から声援を送った。慎吾はふり顧って、腕を叩いてみせたりした。なかなか元気である。果し合いの勝負以外に、何か成算があるらしかった。
戸倉の暗い辻を出端れると、汚い商人宿の軒下に、旅姿の女ひとりに、脚絆手甲をかけた年配の煙火師が二人、首を長くして待っていたが、一行を見ると、
「慎吾様」
と、女が先に走り寄った。
「お芳どの、心配するな」
顔を見ると、すぐに慰めて――
「筒や玉は?」