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じろきちこうし

治郎吉格子 名作短編集(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《治郎吉格子 名作短編集(一)(じろきちこうし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 178,609 字 · 362 頁

青空文庫

四

「なるほど、じゃ、千坂様の才覚なのか。――それで、謎は解けたが、あの吉良の首の番は、少し、世間へ」

「それは、誰も考えるが、やはり一つの上杉家の奉公――五年という年を限っての話だし」

「もうひきうけた事だ。嫌とはいわん。――けれど、もう一名の木村丈八郎へは、話がついたのか」

「いや、まだ丈八郎へは」

「あれ程、急いでおるのに」

非常な苦痛のように――

「丈八郎へは、貴公たちから、懸合ってくれまいか」

「む……話してもよいが」

四

痛いものを怺えるような眼を、ふと、反らして、

「たのむ、是非」

と、一角は言った。――ほんとに、腹の底から、頼む、という語韻で、

「実あ、あの男だけが、ちと、俺にゃ苦手なのだ」

「何か、弱味でも、あるのか」

「丈八郎は、おそらく、知るまいと思うが、あれの姉のお里」

「ム。米沢きっての美人だった。――不思議と、あの家すじには、美人ばかり生れる」

「今さらいうのも、懺悔めくが、同藩の市岡へ、嫁ぐ約束になって、結納まですんでいたあの女を、婚礼の間際に隠したのは、俺だ、この一角なのだ」

「えっ? ……。じゃあ、嫁ぐのを嫌って、川へ、身を沈めたというのは嘘か」