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じろきちこうし
治郎吉格子 名作短編集(一)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《治郎吉格子 名作短編集(一)(じろきちこうし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 178,609 字 · 362 頁
喬木の魔形が雲のはやい空に揺れて、唸っている。足場の人影は、あわただしく、活溌になって、木ッ葉や、鉋くずが、地に舞った。
「ちょっと伺います。――職人衆、仕事のお手を止めて、恐れ入ります」
仕切帳でも包んであるのか、小風呂敷を腰から前へ結んで、矢立に、道中差、千種の股引を見せて、尻端折をしている、若い商人ていの旅人だった。
「――来るぜ、ひと夕立」
と、雪脚に趁われて、ばたばたと、片づけ仕事に慌てていた大工たちが、
「なんだい。物売りなら、明日来ねえ」
いい加減に、答えていると、
「いえいえ、てまえは、縮布屋の手代で、物売りではございません」と、若者は、ていねいに挨拶をし直して、
「伺いたいのは、実はこの日光の御普請場に、賭場があるそうで」
「おい。邪魔だな、あぶねえぜ」
「はいはい、相済みません。――その賭場に、十日ほど前から、清水一角という浪人が、遊びに来ているという事を、ちらと他から耳にしたのでございますが、どなたか、御存じでございましょうか」
「知らねえよ、一角なんていうな」
「でも、慥な所から……おかしい。間違いはないような話なのですが」
「幾歳ぐらいな浪人だい」