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じろきちこうし

治郎吉格子 名作短編集(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《治郎吉格子 名作短編集(一)(じろきちこうし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 178,609 字 · 362 頁

青空文庫

「止めろっ。おいっ! あぶない!」

突然、誰か、こう呶鳴った。

そして、一角のうしろからも、丈八郎の後ろからも、むずと、抱きすくめた者がある。

「や、青砥弥助」

「おう、湧井半太夫じゃねえか」

丈八郎も、一角も、同じように驚いた。そして、互いに、叫び、悶え、抱きとめている手を振りもいで、挑みあうのを抑えながら、

「待てっ、任せろ。――御家老もおいで遊ばしている事だ。御家老に対しても」

と、二人は、必死に制した。

「え。千坂様が」

さらに、意外に衝たれているまに、青砥は、手をあげて、

「駕、駕」

と、桐ばたけの蔭の灯を呼んだ。

飛んできた、町駕が二つ。――湧井は、無理やりに、

「さ、はいってくれ。討つとも、討たれるとも、とにかく、話はお屋敷で」

微行の塗駕が、すぐそばを通った。提灯のしるし、まぎれもない、千坂家のものである。

その後に尾いて、

「――早く、早く」

と、湧井半太夫と、青砥弥助とは、駕を急き立てて、たッたと駈けだした。そして、真っすぐに浜町の千坂家の下屋敷へ。

祭りを見せるといって、馬喰町の旅籠から、お信を連れて、出あるいていた繭買の銀六老人は、お信には、分らぬ、知れぬ、とばかりいっていた丈八郎の行動を、どうして、そう心得ているのか、