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じろきちこうし

治郎吉格子 名作短編集(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《治郎吉格子 名作短編集(一)(じろきちこうし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 178,609 字 · 362 頁

青空文庫

先の楼主に、無理を願って、この通り、金と証文を――」

「いやいや」と蔵六は手を振って――「もう要らない、もう、断る」

「ただは返せねえぜ、ただは」

「だって、しようがあるまい、要らないものは」

「手数と、詫び金を、付けて出せ」

「幾ら」

「一両」

「たかい。一両はたかい。――二分くらいなら出すから、四、五日うちに、またお寄り。ああ、わしがいないでも、分るようにしておくよ。――左様なら」

追い出すように返すと、

「お父っさん、折角、調いかけた話を、破談にして、どうするんですか。――さっきも、兄さんの主人が来て、今明日中に、目鼻をつけなければ、訴えると、門口で、喚いて帰りましたのに」

と、売られる運命だった長女のお登利は、泣き腫らした眼で、父の顔つきを疑った。

「いいわさ、心配すんな」

病人と二人へいって、破れ障子を開けた。

見ると、自分の家の腕白と、ほかの悪童どもが集まって、泥棒ごっこをやっている。一番年上の悪太郎が、前垂で、覆面をして、

「ドロンドロン、ドロン。おいらあ、義賊の雲霧仁左衛門」

と、銀紙の刀を抜いて、押入の中から出て来るところへ、蔵六は、入って来た。

「馬鹿野郎ッ」