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じろきちこうし

治郎吉格子 名作短編集(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《治郎吉格子 名作短編集(一)(じろきちこうし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 178,609 字 · 362 頁

青空文庫

いつ見ても、悪くないのは山吹色だ。音もちがう」

チーンと、今度は、二枚を持って、耳のそばで、小判と小判とを触れ合せながら、その音色を楽しんでいた。

「いや、待てよ」

それを置いて、帳面を繰返しながら、

「そうそう、麹町の取立てを、元利とも払い下げの買地の方へ廻したのが付け落ちている。――すると、どうやら、先月も二割上かな。いや、三割近いぞ。――だのに、金がそう殖えてないのは? ……。ははあいけねえ、娘の医者だの、餓鬼の何だのと、この頃は、一人口が殖えた上に、物要りつづき。だいぶ出銭が多いせいじゃろう。ろくでもねえ餓鬼だ。くたばるかと思や、くたばりもせず、親がこうして金に子を生ませていれや、娘は、盗ッ人の種なんぞ孕みやがって……」

みしッと、その時土蔵と座敷の境で、人の気配がしたらしく感じられたので権内は、大きな声で、

「誰だッ。――娘か」

と、いって見た。人影が、障子に触って、

「俺だ」

と、静かにいう者がある。

「な、なんだと」

「一昨年邪魔をした雲霧だよ。――父っさん、お達者かい」

「けッ。雲霧だ?」

開いた障子へ、権内は、ぎょっとした眼鏡の光を振り向けた。