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じろきちこうし

治郎吉格子 名作短編集(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《治郎吉格子 名作短編集(一)(じろきちこうし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 178,609 字 · 362 頁

青空文庫

春昼・二つの人出

春昼・二つの人出

木遣の音頭だ。

手古舞の金棒だ。

じゃらん――じゃらん、と。

宝町の三井では、建築増しの竣工た祝いと、新開きの西店の売出しとで、一町内に、紅白の幕を張り、紺の暖簾に、花傘を植えならべて、屋根の上から、餅を撒いていた。

たいへんな客、たいへんな弥次馬である。

「ほ、餅撒きか」

雲霧は、ぼんやり、足を止めた。

そこまで、どう歩いて来たか、彼自身はうつつだった。――伝馬町の不浄門からぽい、と突き出されて、いきなり、娑婆の朝東風に吹かれた途端は、覚えているが?

「――俺は生きてる」

そればかりを、余りの不思議さに、夢か、間違いかと、ただふわふわした気持だ。

「だが、間違いじゃねえ。夢でもねえ」

と、雲霧は、動いている世間、華やかな江戸の春に、眼を瞠って、つぶやいた。

今朝、牢から引き出されると、いきなり白洲で、放免をいい渡されたのだった。なぜか、まるで見当がつかない。

それを、歩き歩き考えてみると、どうも、代地の権内の事件が原因らしい。――先おとといの晩、夜叉権を襲ったのは、義賊の雲霧だと、町では、彼が想像以上な噂なのだ。いや、人気といった方がいい、