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じろきちこうし

治郎吉格子 名作短編集(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《治郎吉格子 名作短編集(一)(じろきちこうし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 178,609 字 · 362 頁

青空文庫

三界・ふぶき月夜

死骸は、滅茶滅茶だ。胸いたを突いた痕ばかり七、八ヵ所もある。復讐的な虐殺だ。

「――分らねえもんだ、あのまあ、気だてのいい、針屋が?」

と、人々は、首を振って、不思議がったり、余りの酷さに、眉をひそめたり、何だか、世の中も、世の中に住む人間も、わけの分らない気がしてきた。

三界・ふぶき月夜

わけの分らない世の中が、天明から、寛政、文化と流転した。

あれから、まさに春秋二十余年。

×   ×   ×

カアーン。カアーン。

霙でも呼ぶように、灰色の冬の寒空に、鉦をたたいて歩く男がある。

青ッ洟だの、腫物たかりだの、眼やにくそだの、味噌っぱだの、頬も手も、かじかんでる癖に、寒さを知らない伊吹山の麓の風の子たちが、

「地蔵様へ、花供げろ。――地蔵様へ、花供げろ」

と、道ばたの寒椿の、白いのや、紅いのを、むしり取っては、前へ鉦を叩いてゆく、男の笈へ投げつけていた。

伊勢路近江路、時には、京や大坂あたりにも見かける、地蔵行者である。

雨露によごれた白衣を短く着、笈の上から天蓋をかざしている。左の手には、旗を持っていた。旗の文字も、雨に流れているが、

御堂建立勧進、地蔵愛行者心蓮