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じろきちこうし
治郎吉格子 名作短編集(一)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《治郎吉格子 名作短編集(一)(じろきちこうし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 178,609 字 · 362 頁
大川内四十軒の、捻土方、窯焚き、下働きなどの締りをしている鍋島家御用工人、土塀囲いだが邸はかなり広い。
窯は盆地盆地に十数ヵ所、邸の裏山にも、一ヵ所ある。将軍家の献上品や佐賀城のお道具だけを焼くお止窯だ。普通、諸国へだすものは、今も久米一の邸の側の日向りに、まだ火も釉薬もかけぬ素泥の皿、向付、香炉、観音像などが生干しになって乾し並べてあるそれだ。
しかし、これとて、その釉薬、築窯、火法、みな厳秘洩らすまじきものとなって、洩らしたものは磔の掟である。
「御免――」
立派な武士が久米一の邸を訪れていた。
佐賀の城下から来た鍋島家の奥用人、刈屋頼母という侍。通されて奥へ入る。
奥では久米一、おそろしく華麗な部屋に、南蛮渡りの縞衣を着て、厚い衾の上に大胡坐をかいていた。
粉黛の粧い凝らした美女が、彼の瘤のように厚い肩の肉を揉んでいる。また一人の美女は久米一に煙草をつけて出し、また一人の美女が茶を運ぶ、それら脂粉の香と絢爛な調度にとりまかれている陶工久米一は、左眼のつぶれた目っかちで、かつ醜男で、肥えてはいるが、年、六十から七十の間。
憎らしいほど、矍鑠としたものだ。