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じろきちこうし

治郎吉格子 名作短編集(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《治郎吉格子 名作短編集(一)(じろきちこうし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 178,609 字 · 362 頁

青空文庫

さて――話の結びに、彼の残した増長天王はどこへ安置されたか、それを一言する。

天明四年正月早々。佐賀城から江戸へ向って、警固荷役に守られて送り出されたのが、久米一作の増長天王であった。届け先は、頼母が久米一に話した言葉と違って、千代田の城へは入らずに、時の権勢家、田沼山城守意知の屋敷へ贈物とされることになった。

これは鍋島家が、山城守に睨まれていたことがあって、その機嫌をとり結ぶべく、心を砕いた賄賂であった。賄賂といっては、久米一が作らぬだろうと、頼母に旨を含ませたのである。

ところが、増長天王を田沼山城の屋敷へ贈る手続きをしている間に、三月、江戸城朝会の当日、山城守は悪政の酬いをうけ、殿中で刺殺されてしまった。

そのため、増長天王はしばらく江戸の上屋敷の秘庫にあったが、後に将軍家斉に懇望されて、江戸城本丸に移された。しかし、それもやがてまた、幕府瓦解の兆をあらわした、安政六年の失火の時、本丸炎上の紅蓮をあびて、遂に永遠の相を失い、もとの土に返ってしまった。