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じろきちこうし
治郎吉格子 名作短編集(一)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《治郎吉格子 名作短編集(一)(じろきちこうし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 178,609 字 · 362 頁
「え、手拭」と、思わずふところへ動きそうな手を、膝へつき直して、
「どんな手拭が?」
「豆絞りの」
ほっとしたように、
「それっ限りじゃ大した手懸りにもなるまい。ことによると、こいつも、鼠小僧の仕業かも知れませんぜ」
「鼠小僧というのは」
「江戸を荒した大泥棒で、なんでも近頃は、上方へ立ち廻っているという評判だ。方々の橋袂にも、この二、三日、人相書が出ているはずだが」
「あ、そういえば、いろんな噂がありますね」
「とにかく、後々まで、御相談になりますから、ここのところは、諸事よろしく皆さんにお願い申します。ちょうどきょうは、町方の用向きをもって、西与力の重松左次兵衛様のお屋敷まで伺うことがあって、先を急ぎますから」
と、下駄をはきかけて――
「お目にかかったついでに、重松様に、一日も早く下手人が捕げられるように、よくあっしからも頼んでおこう」
路地を出ると、仁吉はあたふたと急ぎ出した。駕籠をとばして、その足で、与力町の重松左次兵衛を訪ねた。
「旦那、ひょんなことが持ち上がりましたぜ」
左次兵衛は、暗鬱な顔をして、脇息から、庭を見ていた。
「なんだ、ひょんなこととは」