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みなもとよりとも

源頼朝

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《源頼朝(みなもとよりとも)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 306,118 字 · 613 頁

青空文庫

三

姉妹はあきれて、

「まあ、何ていう子だろう。――吉次さんも物好きな子を買ってゆく」

と、呟いた。

姉妹はまだ吉次からほんとの話しは打明けられていなかった。その頃は盛んに都の女や童が、奥州へ買われていったので、吉次がどこからか買って来た奴僕と思っているふうだった。

三

吉次も程なく帰って来たが、先に戻ってけろりとしている牛若のすがたを見て、

「なんの事だ」

と、探し疲れた呻きの中から、ほっとした顔色やら腹立たしさを一緒に洩らした。

「あれほど、固くお断りしておいたのに、黙って何処へ一体おいでになったんですか」

なかば、咎めるように訊くと、

「だって吉次、そんなにいつまで坐っていたら、脚も心も腐ってしまう。町を見物に行って来ただけだよ」

と、平気で云う。

「いや、それだけじゃないでしょう、何か、お望みがあって出かけたのでしょう」

吉次が、かまをかけると、そこはまだ少年らしかった。

「ほんとはね吉次、母上のおいでになるお館は、堀川のあたりと聞いていたから、そっと行ってみた」

「えっ……一条様のお館をさがして」

「人に訊いたらすぐ知れた。――けれど訪ねて行きはしない。遠くから……堀川の柳の木越しに、築土だの、屋根だのを見て帰っただけだよ」