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みなもとよりとも
源頼朝
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《源頼朝(みなもとよりとも)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 306,118 字 · 613 頁
三
――今夜も淡い月が出ていた。すこし雨曇りの空ではあるが、雲は断れていて、時折、雁の影がよぎって行った。
三
その夜、源氏方では、
「河を越え渡るには、未明を計って、敵の寝込みを襲うしかあるまい」
と、朝討の評議がきまって、部将たちは、夜おそく、各※(二の字点、1-2-22)の陣地へ支度にもどって行った。
武田太郎信義は、次郎忠頼、三郎兼信の二人を連れて、そこから帰る途中、
「あすこそは、甲斐源氏の名に恥じぬよう、人に負れぬ先陣を取りたいものだが」
と、洩らした。
すると二郎忠頼が、
「お味方のうちには、われこそと、腕をさすって、あすの一番乗りを期している面々が余りに多すぎますゆえ、尋常一様なことでは衆に優れた功名を揚げることはできますまい」
「いや、どうしても、あすの名誉は、甲斐源氏のわれわれが克ち取らねばならぬ。――伊豆、下総、上総、相模、武蔵の味方たちは、年来お側にご奉公を遂げた者や、各地で戦って来た人々だが、われらにとっては、あすこそ初の戦場だ。……こんな時こそ、生涯人の下風につくか上に立つかの、分れ目というものだ」
「では、こうしては如何です。……こよいのうちに、そっと、陣所を払って」