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みなもとよりとも

源頼朝

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《源頼朝(みなもとよりとも)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 306,118 字 · 613 頁

青空文庫

六

「な、なにを、そちまでが、痴けたことを云うかっ。――佐殿とは、そも何者か、弁えてものを申せ。六波羅の罪人、配所の流人、そんなものに、この時政のむすめが嫁れるか。――しかも時政は、太政入道殿より、それが監視をさえ仰せつかっているものを……わが息女を、その流人の妻などに……ば、ばかなっ、どう頭が狂おうが、そんなばかな事ができるものか、できぬものか、そちにも知れておろうが」

唾をとばしながら、彼は宗時の頭を睨めつけて云った。しかし怒号しただけでは、なお、当惑は除りのけられなかった。時政は、庭へ出て行った。そして黙々と山林を逍遥していたが、やがて、むすめ達の局へ、小舎人を走らせて、

「大殿がお召しです。政子様お一方で、あちらまで、お運び下さいますように」

と、迎えによこした。

六

政子は、鏡に向って、髪を梳っているところだった。

呼びに来た父の使いへ、

「はい」

と、頷いてからも、なお、落着きこんで、鏡に向っていた。

ふたりの妹は、帳を隔てて、ひそやかに寄り合っていた。ひとりは文机に向い、またひとりは、先頃父が都から土産にと齎して来た絵巻物の絵詞を、頬づえついて読み耽っているのだった。