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みなもとよりとも
源頼朝
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《源頼朝(みなもとよりとも)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 306,118 字 · 613 頁
忘驚の人々
一
と見えたが、その僅少な徒党に対して、伊豆、相模、武蔵の平氏が何千と駈け向ったというので、
「ても、大仰な……」
と、なお、嘲っていた。
今、景親からの三度目の報告を開いてみると、案のじょう、その文には、
二十四日暁天。
頼朝、堪ヘ得ズシテ、遂ニ当所ヲ退キ、不知行方。
或説ニ曰フ。穴ヲ掘テ自ラ埋リタリト。
又、説ヲ為ス者曰フ。
石ヲ抱イテ水ニ入レリト。
巷説多端、ソノ首ヲ見ザレバ確メ難シト雖モ、滅亡ノ条勿論歟。
「はははは。石を抱いて水に入る――はよかったな。火へとびこめば夏の虫だった」
一場の笑いばなしと過ぐる中に、景親に対しては、兇徒というかどで、恩賞の沙汰すら議されていた。
入道相国の身近に出入りする大将のひとりから洩れたはなしでは、頼朝謀叛と聞えた時、入道はひどく不機嫌ないろを示し、
「恩知らずの童めが」
と、口汚く罵ったが、次々の報告などには、一向さしたる関心も持たず、ただ最後の景親の早打ちを見た時は、
「ばか者である!」
と、暑い日に、一杯の冷水でものんだような顔をしたという事であった。
福原の海岸へは、ことしの夏も、知盛、維盛、忠度、敦盛など一門の大家族が、各※(二の字点、1-2-22)の別荘へ、みな避暑に赴いていたが、秋風と共に、遊び飽きない姫や公達輩も、ようやく、都へもどって来た頃だった。