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みなもとよりとも
源頼朝
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《源頼朝(みなもとよりとも)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 306,118 字 · 613 頁
四
「何を猶予なされているのだ。かかる間に、朝がけの時刻も逸してしまおうに」
堂の外では、気負い立っている人数が口々に云い合いながら、両将の号令一下を待ち焦れているのである。
――が、容易に、時政も立たず、頼朝も出て来なかった。
そのうちに、ようやく、逸りきった将士は、何か不安と疑いを抱き出した。わけて、若い中にも若い佐奈田余一、南条小次郎、仁田四郎忠常などは、
「大事は、はや取止めか。この期になって、北条殿にもわが君にも、何のご評議ぞや」
と、聞えよがしに、怒りさえおびて云い放ったのであった。
むりもない。すでに陽は高くなりかけてゆく。夜討朝がけは敵の虚を衝いてこそ効はあるのだ。これでは堂々たる白昼戦になってしまう。
「しずまれ」
やがて頼朝の声がした。その姿を堂の縁に見せて、一同へ告げ渡した。
「佐々木兄弟その他、なお遅着の者がだいぶ多い。また、兵略上にも、最初の方針をすこし変更の必要もあるので、今暁の朝がけは延期することに決めた。――次の命令の下るまで、一同は、ここを去らずに、静かに休息いたしおるように」
云い終ると、頼朝も時政も、そのまま、館のほうへ歩み去ってしまった。