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みなもとよりとも

源頼朝

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《源頼朝(みなもとよりとも)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 306,118 字 · 613 頁

青空文庫

五

その武名を紛らわしては済まない気がしますから――九郎、義経と」

「九郎義経か」

「はい」

「よいお名じゃ。吉い日でもおざった。では、この辺りは平家の衆も多い事、東国までは、すこしも早く急がるるがよい」

「ありがとうございました。――では」

拝殿を降りると、義経は、吉次吉次と、呼びたててその姿をさがした。

「これにいますよ」

吉次は、拝殿のすぐ下に、膝をかかえて、土台柱の根に倚りかかっていた。抜け目はない。上の話は、もうその耳に残らず入れている顔つきだった。

五

旅は日をかさねて。

真夏の大空に、しかも眉に迫るほど近く、富士の嶺が、頂きからその裾野の線を、大地へ消えこむまで、くっきりと見せていた。

ここは足柄越えの山道だった。

「吉次。休もう」

九郎冠者は、道のべの岩に腰をおろした。頂きに近いので、歩みを止めさえすれば、風は冷たく、全身の汗も、すぐ乾いた。

「九郎様。あなたは存外、何でもお心得ですから、おおかたご存知の事でしょうが、北は碓氷を境に、南は足柄山を境として、これから東が、坂東と申します。いわゆる、東八箇国に入ります」

「ウム。ウム」

九郎は、何度も頷いて、