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みなもとよりとも
源頼朝
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《源頼朝(みなもとよりとも)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 306,118 字 · 613 頁
山河から道路や宿駅や社寺の所在など、ずいぶん克明に、一部は出来かけている。
「暑いからなあ。歩くにはたいへんだろう。年内にできればよい」
「年内にはできます。雪が降ると、箱根その他の山々は、道も探れませんから、山のほうを今、先に書いております」
「うむ……」
縁の隅へ、昼顔の蔓が這い上がっていた。白い花が一つ、風にふるえている。頼朝は思い出したように、
「邦通。使いしてくれまいか」
「何処へ参りますか」
「亀の前が、里親の許へ帰りたいという。彼女を連れて、良橋太郎入道のやしきまで」
「え。お帰りになりますと?」
「ひとり帰すも酷い。送り届けてやってくれぬか」
「それはようござりますが、何かと、お身まわりにも、ご不自由ではございませんか」
「大した事はない」
「なんぞ、争いでも遊ばしましたか。――所詮、女子は女子です。ご気色を直して、晩にまた、一酌なされませ。邦通がまた、猿楽でもお目にかけましょう」
「猿楽は、今いたして来た。われながら愚かしき猿楽を」
云い捨てて持仏堂へ籠ってしまった。何かにつけ彼はここへ這入り込んだ。そこにいる間は、写経と読経のほか他念もない彼と成る。