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みなもとよりとも

源頼朝

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《源頼朝(みなもとよりとも)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 306,118 字 · 613 頁

青空文庫

また、北条家のむすめであるという名門の誇りも、父の時政以上、ひそかに高く持っているふうもある。

ふた口めには、

「坂東武士ぞ」

と、それのみを剛毅に持って、知性に乏しく、武骨と精悍ばかりで、まるで土から生え出たようなのが多い土豪の間には、彼女の心をひくような殿輩は、そういう点でも、見あたらなかった。

二十歳といっては、もう女の春は過ぎかけるように、今の世間では怪しみさえするものを、なお、彼女が嫁がずにいるのは、そんな理由からであった。

父の時政が、もっと負担にしているのは、余り容貌のよくない下の妹たちだったが、それらを他家へ嫁入らせるにも、まず一番上の政子を嫁がせるのが、もう急を要するほどな先決問題であった。

「目代の山木判官様から、ご書面のお使いでございまするが」

折ふし小侍が、時政の手許へ、書面を齎して来たが、時政は、それを機に、

「何。山木殿から。――彼方へ持ってゆけ。いずれご返辞が要ることじゃろう」

あわてて息女たちの局を去って、自分の居室へ移った。

三

時政から返書をうけた山木判官の使いが、俗にこの辺の土民が「御所堀内」と称している館を出て、そこの堀橋を越えて帰って行った頃である。