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みなもとよりとも

源頼朝

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《源頼朝(みなもとよりとも)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 306,118 字 · 613 頁

青空文庫

二

――それも、ぽつぽつと、人目立たぬように」

「……?」

「分らぬのか」

「……分りましたが」

「武器は、一纏めに、荷駄として、蔽を着せ、要所へ先へ送っておく。そして人間のみを後から配置すればよかろう」

「では、伏勢として」

「武門の嫁入りだ。どんな変がないとも限らぬ。あっては聟殿に申しわけあるまいが。……父親の心添えだ。総領のそちは、婚儀の席に連なるより、陰にあって、不慮の出来事に備えておれ」

宗時が、頭を上げると、父はもうそこにいなかった。

二

誰も彼も、華やかな忙しさに追われている中に、時政の顔のみは、不機嫌とも見えるほど硬ばっていた。

政子の輿入れに前立って、父親は父親としての、心遣いに趁われてもいよう。今、惣領の宗時に、その一つを託し、召使たちの右往左往している廊を真っ直ぐに通って、わが室の辺りまで来て佇つと、

「牧っ……。牧っ」

と、妻を呼びたてた。

そして、牧の方の姿を見ると、

「後でよいが、政子の支度が終ったなら、広間へ入る前に、これへと申せ」

と、いいつけた。

そのまま、時政は、座に着いて、黙然と、守山の雲の去来を、廂ごしに見ていた。

庭面は暮れかけてくる。