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みなもとよりとも

源頼朝

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《源頼朝(みなもとよりとも)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 306,118 字 · 613 頁

青空文庫

「はははは」

時政は笑い消した。

「泣いているのか。はてさて、まだ子どもよのう」

と、牧の方を顧みて、

「例を申したのじゃ。何も難しい意味ではない。そなたが嫁ぐ山木判官兼隆は、幸いにも、平氏の同族。――末長う、貞節に侍けよ」

「…………」

政子が、頭を下げるのを見ながら、時政は起ち上がって、

「いそいで、顔の粧いを直せ、広間の方に、立ち祝とて、一族大勢の輩がもう待ちうけておる」

牧の方は、彼女を伴って、帳の陰で、何かささやいていた。

一しきり広間はしんとしていた。花嫁の立つ式事が厳かに執り行われた。それがすむと、にわかに大勢の笑い声や、手拍子や、祝歌などが聞え、花嫁は、一門の縁者達に取りかこまれて輿へ移った。

花嫁が輿へかくれてからも、夕篝りの明りの中に、夥しい花嫁の荷と、人馬との混雑は、容易に列がそろわなかった。そして時折、夜に入って一しお肌寒い時雨が、松明や燎火の焔をうごかした。

三

さすがに彼女も胸がいっぱいで前後もよく分らない程だった。やがてわが輿がかき上げられると、器の水の溢るるように、胸は揺れ、涙はとめどなく流れた。

――不孝の子の吾儘をゆるして下さい。