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みなもとよりとも

源頼朝

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《源頼朝(みなもとよりとも)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 306,118 字 · 613 頁

青空文庫

時政は、前へ進んで、

「令旨をお濡らしになりはしませぬか」

と、訊ねた。

頼朝は、顔を振って、肌身にふかく護持している以仁王の令旨を出して拝した。そして、時政の手に授け、

「旗竿の先に結びつけて、軍勢のうえに高々と捧げよ」

と、いいつけた。

時政は、畏まって、中平四郎惟重を呼び、

「これは、亡き宮の御心のこもっていた令旨であり、また、われわれの魂でもある。心して持て」

と、捧持の役をいいつけた。

「身にあまる誉れです。一命をかけて」

平四郎惟重は、ひざまずいて旗を押し戴いた。その父、中頼隆は、わが子の光栄に涙ぐんで、

「せがれめに過ぎた大役、父子共々、力を協せて守護いたそう」

と、鎧の背に、大きな御幣を負うて、勇み立った。

「物見は帰らぬか」

頼朝の問に、

「物見の者も、あの大暴風雨では、歩むにも歩めず、どこかへ山籠りいたしたものでしょう。――が、今朝は、見えるに違いない」

時政は、そう云って、

「その間に、肚ごしらえをしておいては」

と、頼朝の眸を見た。

「ム、ム」

頼朝は、荒海のすさまじさを遠くながめていた。飛沫に旭光が映して、磯は金色に煙っていた。

「兵糧を解け」