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みなもとよりとも
源頼朝
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《源頼朝(みなもとよりとも)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 306,118 字 · 613 頁
二
それだけ国土の損です。民の苦しみです。人心を悪くさせるばかりです。――となったら、勿体ない事ですが、朝廷のご存亡まで案じられます」
飯田五郎は、一生懸命で話すのだった。どう云ったら、自分の真心が、頼朝に容れられるかと、覚束ない智識をしぼって語る容子があわれでもあった。
「……で。いろいろと、迷ったり悩んだり致しましたが、大義と小義だと、考えつきましたので、源氏方のほうへ、走りこむ隙を窺っておりましたところ、ご危難を見かけたので、われにも非ず、前の主人景親様を、あのような目に遭わせて、お供に従いて来たわけでございます。――以後、お馬の口取にでも、お召使い下さるなら有難うぞんじまする」
ここまで云うと、飯田五郎は泣き声になってしまった。
「この頼朝の敗れを見ながら、敗軍の将に従いて来たそちこそ、頼朝にとって、真の味方。うれしいぞ」
と、頼朝も涙ぐんで、行末長く主従たることを誓った。
けれど、源氏系でも平家系でも、縁故などはどうでもよい一士卒に過ぎない飯田五郎が、敵方に身を投じて来たのは、頼朝という人間のみに景仰を持ったわけではない。彼が随喜したものは、彼が産も家系もない庶民の一人だけに、かえって正直に理解される現状の世の中の悪さと、将来に渇望されるものにあった。