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みなもとよりとも

源頼朝

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《源頼朝(みなもとよりとも)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 306,118 字 · 613 頁

青空文庫

隅田川

一

老人は誇らしそうに云った。

「その孫は、いずれに?」

常胤の誇りに花を添えてやるように頼朝が訊ねると、

「小太郎、小太郎」

と老人は、孫の成胤をさしまねいて、頼朝の見参に入れた。

まだ十六、七の若者だった。頼朝は、平治の乱に、自分たち兄弟が初陣に立った時を思い出すなどと語って、次々に、常胤老人の子息を近くへ招いて、

「みな、あっぱれな面魂。競って家名を揚ぐる事であろう。行末、頼朝も目をかけて進ぜるゆえ、老台にご安堵あるがよい」

と、云った。

わずか三百の小勢を引き率て、まだ拠る所も持たない漂泊の亡将にしては、その言葉は、ずいぶん大言であったが、常胤は、むしろその大言を頼母しく見上げて、

「子息も、孫どもも、挙げてお預け申すからには、如何ようとも、お引廻し下されませ」

と主従の約をつがえた。

その日、千葉城からは、頼朝の軍勢一同に、弁当を贈った。

行軍の将士は、それを野外で開きながら、久しぶり飯の味を噛みしめた。――こんな飯を今日ここで味わおうとは、予期しなかったところである。――ある者は、

(きょう下総へ入ったら、早速に合戦となろうも知れぬぞ)

と、弓弦を調べたり、足拵えを確かめて来た程だった。