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みなもとよりとも

源頼朝

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《源頼朝(みなもとよりとも)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 306,118 字 · 613 頁

青空文庫

すると、すぐ、誰かが弓か長刀の柄をさしのべて、

「つかまれつかまれ」

と、扶け合う。

二、三百騎、いちどに水を切って上陸った。誰が先、誰が後とも見えなかった。たちまち、千騎、二千騎、なおも後からひきもきらず平家の陣地へ駈けこんだ。

「おうーいっ」

と、呼べば、

「おおういっ」

と答えてくる。どこを駈けている者も味方ばかりだった。平家の旗や幕はあるが、敵らしい者には誰も出会わなかった。

「何で、かくも素迅く、あれだけの大軍が逃げ去ったのか」

源氏方には、ただ不思議でならなかった。そのうちに、

「いたわ、いたわ!」

と、味方の若い一組が、大声で騒いでいた。何がいたかと、駈け集まってみると、平家方の大将の陣所らしい幕舎の隅に、一かたまりの妓の群れが、おののき縮まって、地に伏したり、幕にかくれたり、抱き合ったりして――中でも稚い十二、三の妓は、シクシク泣いていた。

「なんだ、敵ではないのか」

「この近くの宿駅から狩りあつめて来た傾城どもだ。……いや、民家の娘らしい女子もみえる」

「あきれたものだ。――陣中へ」

「ここばかりでない。どこの陣所にも残っているのは女ばかり。――都そだちの平家人は、女子にまで、かくも無情よ。