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みなもとよりとも
源頼朝
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《源頼朝(みなもとよりとも)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 306,118 字 · 613 頁
――所詮、その威勢は、路傍になど佇んで見ていられるものではなかったから、吉次はあわてて佐賀山へ上ってしまった。
佐賀山の下の海辺道まで頼朝が来かかると、それを出迎えに出ていた郎従五十人ばかりは、一斉に馬を下りて、砂上に平伏した。
「ご老人、ご老人ッ」
突然、三浦義連が、こう誰にも聞えるような大声で、注意をした。
「わしの事か」
上総介広常は、馬の上から見まわした。
すべての将士が、下馬して、砂上に平伏しているのに、彼のみは馬を下りずに胸も反らしていた。
「お年のせいか。なぜ下馬なさらん。ご前でござるぞ」
義連が重ねてたしなめると、老人は、彼の叱咤にも負けない声を出して、
「広常、まだ年を老らねばこそ、かように致しておるのでござる。三浦殿とは、家風がちがい、われらに於いては、父子三代のあいだ、東国の武門として、まだ下馬の礼はいたした例がござらぬ。――馬上の武士は馬上のまま礼をいたすが、わが家においては、最上の礼儀でござる」
そう云って、彼のみはとうとう馬を下りなかった。
頼朝は、苦笑して通った。
こういう一徹な曲げない風は、老人ばかりでなく、彼の擁す兵ばらには皆あった。