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みなもとよりとも

源頼朝

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《源頼朝(みなもとよりとも)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 306,118 字 · 613 頁

青空文庫

馬筏

一

馬筏

一

義経は、河辺に立って、

「水練の達者なものは名のり出でよ。河底へ潜って、逆茂木へ縦横に張りめぐらしてある荒縄を断ち切れ。――われと思わんものはないか」

と、味方を顧みて云った。

そのことばも終らないうちに、彼方此方で、

「おうっ」

「おお!」

と、兵ばらの奮いたつ答えが聞えた。

渋谷右馬允のそばにいた一家臣などは、具足を脱ぐのに誰よりも迅速だった。真っ裸になったかと思うと、義経の前を駈けぬけて、もう眼の前の奔流へ跳び込もうとしかけた。

「待て待て」

義経は、手をあげて、後からつづく者へも、注意した。

「春とはいえ、水は冷たい。雪のある山々にも近いゆえ、恐らくここの流れは身を切るほどだろう。そち達、水練には巧者でも、素肌では、寒烈な水底で、長い働きはできまいぞ。肌着のみは、着けてはいれ」

宇治川も変遷している。

当時の宇治川は後の世のそれのように、悠々と穏やかな相をもった大河ではない。河幅もずっと広く、河原は年ごとの洪水にまかせ、流れの迅さ深さ嶮しさ、さながら、原始時代のままだった。

ただ幾分か、人工が加えられてある所は、今、義経が立っているここ平等院の北の辺り――土民が富家の渡しと称んでいる岸だけであった。