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みなもとよりとも
源頼朝
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《源頼朝(みなもとよりとも)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 306,118 字 · 613 頁
「はっ」
と、恐縮しながら、
「お上がりなさい」
と、常磐を促した。
常磐は、顔を上げ得ない。
乳のみは無心だが、今若と乙若の二児は、二夜の牢舎暮らしに怯えきっていた。母の膝から寸分も離れないのである。
「仰せじゃ。上がられて、床の座をいただきなさい」
起たないので、奉行がまた促すと、常磐は二児をあやしすかして、ようやく、俯向きがちに広縁の端まで上がって坐った。
母子三人が、巣の中の小鳥のように、小さく縮まり合った。
見も知らない怖い小父さんたちが、厳然と、清盛の左右に見えるので、今若も乙若も、母の膝へ爪を立てないばかりにしがみついていた。
「…………」
清盛は、その幼い者と、常磐の窶れ果てた顔とを、見くらべていた。
初めて見る常磐ではない。九条院に仕えていて麗名の高かった頃から始終、垣間見ていたものである。
死んだ義朝といい清盛といい、お互いが女には眼の早かったものである。どこの局にはどんな女性がいるとか、なにがしの中納言の娘はどうとか、武将たちの話題がそれになると、源氏も平氏もなく喧しく賑わった。
そして人の恋している花を、横から手折って興がったり、戦の先陣に次ぐ誉れみたいに、見よがしにした。