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じろきちこうし

治郎吉格子 名作短編集(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《治郎吉格子 名作短編集(一)(じろきちこうし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 178,609 字 · 362 頁

青空文庫

そして教えられた川添いの道を下へ向って、ゆっくりと歩いていた。

やがて、土手を右へきれると、遠くに人家が見えた。

「あれだな、小篠は……」

鮎川の家を訪れる前に、とにかく、仁介の身内の概念だけを知っておきたいと考えた。――たしかに仇の賛之丞だとはいうが、もし、まったく別人だったらつまらない話で、どっちみち、今夜は鮎川の部屋に泊まるにしても、そうだとしたら、気楽に訪れてくつろいだがよい。

藪の蔭に赤い火が見えた。荒物などを傍らに売る掛茶屋があって、土間炉にゆたかな火を焚いているのだった。

「爺さん。鮎川の仁介の部屋があるという、小篠はもうすぐそこだったな」

そこの焚火にかがみ込んだ三五兵衛は、草鞋の足袋から湯気がのぼッて、頬までぼっと温まってきた頃、そろそろ話をもちだしてみた。

「ええ、もう二十町とはございません。お侍様は、これから鮎川親分の部屋をおたずねなさいますので」

「ウム、そのつもりだが、桂川のふちで、空ッ風に吹かれて来たので、火を見ると、もう歩くのが嫌になってな」

「何しろ、ここは街道から二、三里横にはいりますから」

「だが、甲州路を通る浪人などは、鳥沢の宿に泊まらずに、たいがい鮎川の部屋へ行くそうだが」