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じろきちこうし

治郎吉格子 名作短編集(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《治郎吉格子 名作短編集(一)(じろきちこうし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 178,609 字 · 362 頁

青空文庫

何でも親父さんは、御浪人だということを聞いていました」

「そうそう、それに違いねえ。いや、大きに有難う」

すっぱりと、こだわりの霽れたように、治郎吉は宿へ帰りだした。旅宿は北久太郎町の鈴木屋、お仙といっしょに、そこの裏二階に、十日あまり泊っていた。

裏二階の下は東堀。思案橋を隔てて、川向うはすぐに、西奉行所だった。女とふざけながら、治郎吉はそこからよく奉行所の屋根にとまっている鴉を見ていた。

「おや、お帰り」

お仙は、風呂から上がって、こっそりと、厚化粧をしていた。膳も来ていた。長火鉢もきれいに、すっかり、女房気どりである。

「兄さんはいましたか」

「いたよ」

「話は」

「止めにした」と、あぐらをくんで、「仁吉はいたが、少し考え直して、おめえの話は、出さずにしまった。なあに、抛っときゃあいい」

「よかあないんですよ。こうといったら、どんなことをしても、きっと我を通す兄なんですから。その話のかたがつかないうちは、恐くって、私は、外へも出られない」

「べら棒め。三都はおろか田舎城下にまで、人相書の廻っているこの治郎吉ですらこうして、真っ昼間、大手を振って歩いて来らあ。