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じろきちこうし

治郎吉格子 名作短編集(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《治郎吉格子 名作短編集(一)(じろきちこうし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 178,609 字 · 362 頁

青空文庫

と、暗くなった。

背なか合せに、どっさりと、草に腰をおろして、

「こんな調子じゃ、いつ江戸表へ着くことやら」

「人のせいみたい」

と、お稲は、恨むような眼ざしで、

「これは、誰の子ですえ?」

「知れたことをいうな」

「自分が、無理にいうことをきかせた女房――自分が、勝手に生ませた子を邪魔にばかりしてさ――」

「まったく、邪魔だ。おれはなぜ、こんな者を、持って歩かなければならないのかと思う」

「今さら後悔したところで、二人とも、どうにもならない話でしょう。――子が生きたから、捨てようとしても、こん度は、こっちで捨てられやしないからね。一生涯、離れやしないから……」

「どうでもなれ」

三五兵衛は吐き出すようにつぶやいて、雲を見ていた。

かれは、女のことばが、いちいち、村上賛之丞のかわりになって、棘々しく、自分に、責め、逆らって来るように思われてならない。

(返り討ちだ。おれは正しく、賛之丞に、返り討ちになっている――)

こう考えると、三五兵衛は、たまらなく、忌々しかった。顔を見ても、むかむかしてくる。お稲も子どもも。

また、この子にしても、果たして、自分の子か、賛之丞の子か、それも疑問だ。