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じろきちこうし

治郎吉格子 名作短編集(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《治郎吉格子 名作短編集(一)(じろきちこうし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 178,609 字 · 362 頁

青空文庫

ふさいで、じっと考えつめるのだった。

今夜なども、飲めない酒を飲んでまで――また、老いと苦悩の、億劫な気もちをも曲げて、花街へ、人を招んで、おかしくもない夜更かしに帰るのも、みな、上野介のために、幕府側の人々を、手なずけておくためだった。

(これが、自分が大石の立場であるなら、ふえる白髪も、苦労栄えというものだが……)

と、心で、自嘲しながら、ふっと、頭をもたげた時、

「――殿様、百本杭で」

と、船が、急に舵をまげていた。

冷たい杯を置いたまま、じっと、俯向いていた一角が、すぐ首を出して、

「お、着けてくれ。――俺はそこで」

と、立ちかけると、兵部が、

「いや、そのまま、行け、着けてはならん」

と、船を河心へ返させて、一角へ、顎で、陸の人影をさしていった。

「さすがに、町方というものは、鼻がきくの。あれを見い、根気よく、河岸づたいに、この船を尾けてくる」

「あ……」

一角は、小障子を閉てた。

船が、永代に着くと、橋袂に、迎えの灯が待っていた。千坂の家来たちに囲まれて、そこから近い兵部の下屋敷へはいってゆく浪人を、清水一角と、はっきり分っていながら、町方とその捕手たちは、どうにも、手が下せないで、