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じろきちこうし

治郎吉格子 名作短編集(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《治郎吉格子 名作短編集(一)(じろきちこうし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 178,609 字 · 362 頁

青空文庫

――といって決して一角を、女たちの前で、子供あしらいにするではなく、実際に飲んで遊ぶとなればなお、面白い。彼自身が、苦労も何も忘れているばかりでなく、相手をして、ほんとに、顎を外して遊ばせるのである。

「なぜ、おめえは、秤量なんぞを、腰に差していねえで、幇間にならなかったか」

と、一角が、上わ唇を舐めあげて聞くと、

「あいつが、楽な商売に見えますかい」

と、老人は、一蹴に答えて、

「それよか、旦那あ、なぜ一本ですむ物を二本差して、窮屈がっているよりも、さらりと、博奕打にでもならないのか、わしゃあ、ふしぎ……」と、真面目にいった。

女たちが、話の深味を、はきちがえて、

「博奕ならば、今、日光には、大きな賭場ができていますから、私たちが、男だったら」

「そうそう」と、老人は、膝を打って、

「陽明門の御修築で、諸国から、職人たちが集まっているせいだろう。あれはすばらしい。日光の賭場を知らずに、博奕は語るな。旦那あ、どうですな」

「行こう」

思い立つと、すぐだった。

気まぐれではない――ここの払いをしてみると、一角は、もう底の透いてみえる持ち金に、少し、心細さもあったのである。