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じろきちこうし

治郎吉格子 名作短編集(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《治郎吉格子 名作短編集(一)(じろきちこうし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 178,609 字 · 362 頁

青空文庫

自分の変化がわからないのである。

一つ釜の飯の同化力はおそろしいものだ、と思った。――この、吉良殿の首番としてごろごろしている侍部屋には、今、十一人の剣客がいる。自分もそのひとり、清水一角も、その一人だ。

「――たのむ。お家のために、吉良殿ではない、上杉家の社稷のために」

あの、直江山城以来の人物といわれている国家老の千坂兵部が、軽輩も軽輩――とるにたらない若輩の自分へ、

「私怨は、わすれてくれ。わしが、たのむ」

と、手をついたではないか。手を。

(衝たれずにいられるか)

丈八郎は、否やなく、

(一角とは、桐ばたけで、刺し交えたと思って、吉良殿へ、参りまする)

と答えたのだった。

ところが――初めは、朝夕に、顔をみるさえ、影をみるさえ、むらっと、殺意に燃えた一角が、誰より、一番ふかい自分の友だちになっている。一つ釜の飯の感化なのか、今では、憎もうとしても、憎めない。

「さあ来い。酒を賭けるか」

と、毛脛をむきだして、脛押しをしている一角。酔えば十一人の部屋を、ひとり顔に、寝ている一角。

「よく、無宿者が集まりやあがったぜ。ここは、人間のさなぎが寄った無宿人の国だ。