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じろきちこうし

治郎吉格子 名作短編集(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《治郎吉格子 名作短編集(一)(じろきちこうし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 178,609 字 · 362 頁

青空文庫

人影と見れば、双方から、ぶつかッて、刃をあわせた。

「――おッ、そこにいたか」

池のふちに、苦戦の丈八郎を見出して、

「――助太刀ッ」

と、味方へ、気勢をつけて、その群れへ、斬りこんだ。

誰か、雪を真っ赤にして俯ッ伏していた赤穂方の一人が、ふいに見た、一角の足を、刀でなぐった。

「ええッ、此奴」

踉けながら、後ろへやった刀が、かつんと、鉢金に弾んだと思うと、鍔から三、四寸の所から、折れて、氷柱のように、すッ飛んだ。

しきりと、室内から、半弓を射て、味方を助ける者があった。――また、ひと群れが、庭木戸から、押しもどって、どっと、雪が、まっ黒になるほど、紛雑する。

「丈八……俺を……丈八……俺を……」

そこを、斬り破って、刀を杖に、よろめいてゆく一角の顔は、もう、あらかた血と、青い皮膚だった。

木村丈八郎の腕を、自分の脇の下へ、かたく抱きこみながら、

「さ。……どこか。……何処でもいい、人眼にかからない、所で、俺の首を……斬れ……。斬ってくれ」

「しっかりしろ! 一角、まだ、まだ」

「いや、御奉公はした。千坂殿への奉公はした。……貴様だって……立派だ……立派に頼まれただけの事はやった。