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じろきちこうし

治郎吉格子 名作短編集(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《治郎吉格子 名作短編集(一)(じろきちこうし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 178,609 字 · 362 頁

青空文庫

と思い込んでいた。

「明後日か――」

ふと、雲霧は、呟いて

「卯平、おめえにも、永い間世話になったが、もうお別れだな」

「お達者に――といいたいが――まあ諦めて、その日までは、心静かにしたがいい」

「ありがとう、覚悟はしている。だが、伝馬牢へ移されちゃ、もう、おめえのような親切者に、死出の世話をして貰うこたあ出来めえと思うと、何だか、名残惜しい」

「なあに、あっちの牢番号も分ってるし、手をかける者も、知れてるから、よく蔵六にも、頼んでおいてやろうよ」

「蔵六とは」

「伝馬の牢番では、一番古顔な男さ」

「お係は?」

「吟味与力、高梨小藤次様」――と口走ってから、あわてて、

「おいおい雲霧、だが、これや、内密だぜ。いいかね」

と念を押した。

見廻りが来る。火検めが通る。コトン、コトン、と淋しい六尺棒の音が消えると、程なく、警板が鳴った。

「寝ませいっ――」

と、卯平は、役目の時刻を呶鳴ってから後でまた、低い、べつな声で、牢格子へ、

「――お寝み――」

といった。

雲霧は、薄っぺらな藁ぶとんへ、ごろんと、横になった。二十日も、湯浴みをしない皮膚は、臭くって、かさかさして、自分の身体みたいな気がしない。