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じろきちこうし
治郎吉格子 名作短編集(一)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《治郎吉格子 名作短編集(一)(じろきちこうし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 178,609 字 · 362 頁
「上役人が、そんな欺瞞に乗るかっ。拷問いたすが、よいか」
「あいや」
雲霧は、手をあげた。
「恐れ入ったか」
「――飛んでもないこと。まったく、覚えのないお疑い、何を以て、俄に左様な再吟味となりましたやら、それをお明し下さらば有難い儀にござりますが」
「――見せてやれ」
書記へ、投げるように、小藤次がいった。
雲霧は、ぎょっとした。茶袋に入れた二十両の金は、もうそこの机に乗っている。高梨小藤次は、うなずいた。
「――偽雲霧、いくら、親分乾分の義理立てかは知らぬが、死んでは、つまらんではないか。安宅丸へ忍び入った時も、そちのほかに、もう一名、逃げおった者があるに違いない。明らかに申せは、そちの罪は、ぐっと軽いものだ。――ようっく、胸に手をあてて、明日まで、考えておくがいい」
拷問はしなかった。若いし、明敏だし、人情味もある。あれで、高梨小藤次が、もう一出世したら、大岡越前や曲淵甲斐らに伍する名奉行になるだろう、とは書記や同心仲間での嘱望だった。
「へい――」
と、雲霧も、この人には、ひとりでに頭が下がった。
だが、牢へ曳かれてゆく途々今日だけはおかしくって、笑靨を、俯向けて歩いた。