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じろきちこうし

治郎吉格子 名作短編集(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《治郎吉格子 名作短編集(一)(じろきちこうし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 178,609 字 · 362 頁

青空文庫

「なあに、お安い御用だ。さんざ、儲けさして貰っている親分のこと」

「そういわれちゃ、面目ねえ。だが、甘えておくぜ」

「さ、どうか」

「ちょっと拝借」

閉める。――帯を解く、お仕着を脱ぐ。

ちゃんと、台所わきの行燈部屋に、乱れ箱が出ている。雲霧は、手ッ取り早く、その中の衣類を身につけた。

きゅッ、と博多帯を鳴らしながら、

「ゆうべ、使いに行ってくれたなあ、誰だっけ」

「伝助じゃねえか」

「ちょっと、呼んでくんねえ」

土蔵二階、なぐさみをしていた若い者の中から、一人が降りて来て、

「あ、親分で」

「伝公、てめえ、ゆうべは門違いをしちまったぜ」

「えッ、そうでしたか」

「西の土橋から、七軒目だ。――向う側の土橋から数えたろう」

「そうですか。相済みません」

「今夜あ、間違わねえでくれ」

「幾ら抛りこんで来ますか」

「やっぱり、二十両でいい」

「承知しました」

「頼んだぜ」

出る時は、店廊下を、突きぬけて、大戸のしとみ障子を開け、田所町の通りへ、ぶらんと、懐手で、歩き出した。

寒そうだが、粋な袷に、羽織なしだった。少し、横っちょへ結んだ博多帯の腰から、鮫の脇差が、こじりを落し、珊瑚の珠に、一つ印籠。